赤羽氏の湯屋 ながたの鉄銹鉱泉(昭和)


『伊那の古城』篠田徳登より  昭和39〜44年執筆



(長田のあたりには)今は(昭和39〜44年頃)二、三軒の家があり、鉄銹系の鉱泉が出る湯屋がある。この湯やは赤羽氏といい、宿の建物は高遠の城下町から持って来た建物で、古色そう然。山の湯にもっともふさわしく、山麓の裾にあって箕輪の平原を一望にながめる気持はまた格別である。温泉の出ない上伊那の北部に鉱泉の湯やは今ここだけだ。この長田の付近には部落がなく、山麓に点在する部落をつないで歩く道によく狐が出て化かされたというのはよくきく話で、今でも夜道を遠い所の電灯の光を目当てに歩いていると、広い原道にすっかり迷いこんでしまうことがある。[p61]