上古田


箕輪町歴史行脚『箕輪町歴史行脚』小川竜骨より  昭和54年 [1979] 出版

※原文は詩調。読みやすい様に管理人が箇条書きなどを加えています。



延喜の古道
延喜古道の開通に伴い、文化、一早く開けし村よ、上古田。



古田神社
神恵(しんけい)、天と地に満つる。古田神社の「み祭り」に、湯立ちの神事、げに(本当に)床し(ゆかしい=昔がしのばれる)

過ぎし日、不慮の災難に全焼したる神殿は、諏訪の名工「和四郎」が精魂こめし作なりと。

其日は何と悪日(あくにち)ぞ。惜みても尚、余りあり。



正全寺
元和二年 [1616] に創建す。伊那諏訪八十八ヶ所の二番、保寿山 正全寺。霊験あらたかに在す、十一面の観世音。衣に縋る(すがる)群生(ぐんじょう・ぐんせい=あらゆる生き物)に慈悲を注ぎて、四(し)百年。



古田焼
時の流れに乗り切れず、遂廃されし「古田焼」。窯場、空しくなりぬれど、今尚残る作品は技術に頭(かしら)下るのみ。



俳人 鹿乙雲外と楓山鹿残
俳人「鹿乙雲外」や「楓山鹿残」文潮達ち。花月に瓢(ひさご)かたげつつ、十七文字を競いけん。



石碑
村の三叉路、十字路に、「二十二夜塔」「三夜塔」。

(月待行事とは、十五夜、十六夜、十九夜、二十二夜、二十三夜などの特定の月齢の夜、「講中」と称する仲間が集まり、飲食を共にしたあと、経などを唱えて月を拝み、悪霊を追い払うという宗教行事である。文献史料からは室町時代から確認され、江戸時代の文化・文政のころ全国的に流行した。特に普及したのが二十三夜に集まる二十三夜行事で、二十三夜講に集まった人々の建てた二十三夜塔は全国の路傍などに広くみられる。十五夜塔も多い。群馬・栃木には「三日月さま」の塔も分布しており、集まる月齢に関しては地域的な片寄りもみられる。)


「六字名号」(南無阿弥陀仏のこと)「寒念仏」(僧が寒の30日間、明け方に山野に出て声高く念仏を唱えること。のちには俗人も寒夜、鉦(かね)を打ちたたいて念仏を唱え、家々の門前で報謝を請い歩いた。)


「庚申塔」や「芭蕉の碑」


仏閣巡る信者等に、苦労ねぎらう、真心の篭れる(こもれる)湯茶を振舞いし接待。供養塔、古りぬ。



馬頭観世音
幾体あるや、数知れぬ、路傍の馬頭観世音。家計支えし飼い馬の霊を弔う。念願に愛隣の情、篭るなり。



人形芝居歌舞伎
伝わる郷土芸能は「人形芝居歌舞伎」など。聞けや安永 [1772-1780] 始め頃、淡路人形遣いなる「六三郎」の指導にて、此の地に広まりしとかや。町の無形の文化財。



古い地名
何百年か呼び馴れし字
・「古屋敷」
・「里林」(さとべえし)
・「山の田」
・「藤内路」(とおねじ)
・「高の洞」(ほら)
・「西木戸」
・「乗り替え」
・「横まくり」



土器
土器の破片を見付け畑




罠場(わなば)に深き落とし穴。猪(しし)突き槍で仕止めしと、古老言へらく熊捕れば、七日七夜を山荒るる。



古い地名
・山懐(ふところ)の「庵林」(あんべえし)

・花より「団子平」(だんごたいら)よし

・「円仏」(えんぶつ)「引地」(ひきじ)抜けがらや。

・「前山御堂」「山御堂」、礎石を残す山の上。



霊の口寄せ
霊の口寄せ、巫女屋敷。忍びよる霧、冷々(ひやびや)と、番場垣外に夜を徹す。



金原長者伝説
掘れど当らぬ銭かめや、金原長者伝説は童の夢を育て来ぬ。



役行者
地蔵草庵 [草葺きの小さな家] 境内に役行者 [えんのぎょうじゃ] の石像や。



淡島神社
淡島神社 木曽鎮(しずめ) 神社古銭も出土して深き茂りに覆わるる。

底透く清水こんこんと、夏を余所(よそ)なる青嵐 [あおあらし=初夏の青葉を揺すって吹き渡る、やや強い風]

今はなけれど、傍らの池には仲の睦まじき夫婦鴛鴦(おしどり)来しことも。



デエラア坊
デエラア坊の足の趾。恐怖に呼吸(いき)を殺しつつ、巨体想像してや見ん。



深沢川の渓流
深沢川の渓流に、詩情をそそる夕河鹿 [ゆうかじか=夕方に見かけるカジカ・河鹿=鳴き声が鹿に似ている蛙=カジカガエル] 。そぞろ歩けば涼を呼ぶ。



稚児岩
けわし、深沢山御堂。殿の所望に居合わせし稚児が、猿(ましら)[ ましら=神聖視された日本猿 ] の如く登り詰めたる岩頭(かしら)。殿の機嫌も日本晴れ。因みて、其の名「稚児岩」と。



鳥帽子前山
鳥帽子前山、雪化粧すれば、里人押し並べて [ おしなべて ] 大根菜、引き急ぐ。



風切り地蔵尊
頭上を群れて渡り鳥、凄き魔の風、除け給ふ。戌亥 [ いぬい=北西・北西からの風 ] 風切り地蔵尊。



遠き、縄文土師 [ はじ=土器や埴輪を製作した人 ] 時代より永住の地と定め、荒野拓きし上古田。さざれ岩、巌(いわお)[ 高く大きな岩 ] となりて、利澤 [ りたく=恵み・利益 ] は苔のむすまでも。




上古田の古地名

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