小野神社・矢彦神社・たのめの森
所在地:辰野町・塩尻市
『伊那の古城』篠田徳登より 昭和39〜44年執筆
北小野にある小野神社、この森を頼母の森という。神楽歌に、
日は照れど かさ着てまゐれ 小野の森 小笹の露は あめにまさるぞ
この森はちょっと他にみられない大自然林をなしている。善知峠からおりて来る道はこの森の前を通る。[p5]
勝頼奉納の釣り鐘
霧訪山一、三〇五米。この山を小野の人たちは合地(おおち)の宮といい、宗賀村の人たちは合図の宮という。ここに登れば一望千里とも言う程で、諏訪・筑摩・伊那が一望出来、御岳山が見えるそうだ。
小野神社の神宝に武田勝頼の奉納した釣り鐘がある。永禄七年、大檀那諏訪四郎神勝頼とある。この釣り鐘は高さ一米くらいの余り重い鐘ではないが、この鐘に、ひび割れと、穴があいている。小野の盆地は水に不足しがちなので、雨乞いのために、この鐘を霧訪山か川鳥まで持ちあげてあらしくずし、神の怒りをかって大雨を求めたという。その時のキズが残っている。[p7]
里が争いで二分
このせまい小野も南北二つにわかれている。いつも水のない、から沢を境に北は筑摩で、南は上伊那。天正十九年、松本藩と飯田藩が争いのため南北二つにわかれて、今日まで学校はひとつだが二郡にわかれている。秀吉の天下統一のころのことである。
また、おかしなことに、北の他郡の筑摩他村に、小野神社があり、地続きの南に、矢彦神社。小野神社は諏訪の明神様をまつり、矢彦神社は出雲系の国土神を祭っている。汽車で見える見事な森は一つだが、中には二つのお宮がならんで、豪壮な建築が立ちならんでいる。[p4]
関連項目:たのめの里/小野神社・矢彦神社/合地の宮・合図の宮/上田城・畑ヶ中/川鳥城/草野の古城/小野の東山道